昨年の11月18日に実施しました新任経営指導員研修の2回目を実施してきました。

今回の研修は丸々一日 相談業務のロールプレイです。

岡山は何かとご縁を頂いていて、一番お邪魔している県ですね(^^)

商工会職員向けの研修において、私が常に重視しているのは「伴走型支援」についてのマインドセットです。テクニカルな内容を伝える事、最新の支援策や各種補助金の情報を提供する事、は私の役目ではないと思っております。

私が講師として呼ばれる理由は、多分
・伴走型支援において、会員事業所に寄り添うという事
・商工会の支援担当者としての覚悟について
・コミュニケーションという道具を使って、会員事業所に
  相談相手として選んでもらう事の重要性について
を重視した研修内容になっているからだと私は思っています。

小規模事業者が相談者に期待する能力・素養

このグラフは中小機構の支援機関内OJTによる支援能力向上マニュアルから引用させてもらっている情報ですが、このマニュアルでは支援者像を下記のように想定しています。

支援人材像として捉えると、「人間的な能力・信頼感」をベースに、「専門的知識に裏付けられた提案」と「多面的な見方・状況判断・新構想立案」が可能で、できれば「具体的な経営知識と経験」を有している人材、すなわち小規模事業者は、専門性、ネットワークと視野の広さ、提案力、人間的な信頼感を求めているといえる。

また、支援者に臨む能力等と支援者としてのマインド、そして、それによる支援結果については下記のような説明がされています。

支援者の3つの能力とマインド

仕事の結果は、各個人の仕事に対する「考え方」、「熱意」、「能力」の3要素の積であると、JALを再建した稲盛氏は語っています。この切り口を活用すると、仕事に対する「考え方」は、「使命感」「仕事の目的」として置き換えられます。
「考え方」は、自ずと仕事に対する「熱意」に表れます。高い能力を有していても「考え方」に使命感が乏しければ、結果が伴わないことを示唆しています。方程式で表すと  仕事の結果=考え方(使命感)×熱意×能力  になる。

この方程式を、支援者として成果創出を図る3要素と解釈すると図表に示す関係構造になります。「能力」を、「知識スキル」「思考スキル」「行動スキル」に3分類し、前述の「小規模事業者が相談者に期待する能力・素養」に当てはめてみました。ベースに位置づけられるのが「考え方(使命感)」であり、その上で「知識」を蓄積し、蓄積した「知識」を組み合わせて「思考」し、「思考」の結果、最適な「実践行動」を選択して、より効果的な企業支援を行えることを表しています。企業支援全体を通して、明確な「考え方(使命感)」がベースにあるからこそ、「熱意」をもって取り組むことができます。

このような内容を説明しながら、模擬的OJTロールプレイの研修は進んでいきます。ですが、私が実施する研修では相談する社長役の人へ支援担当者役の人が何をアドバイスして、どのような情報提供をしたのか?という相談助言内容はほとんど重視していません。

私が実施する 模擬的OJTロールプレイ では、支援担当者役の方へ下記のような質問をします。
・支援担当者がなぜそのタイミングでその質問をしたのか?
・その質問の意図は何なのか?
・会話中、相談する社長役の態度や口調の変化に気づいたか?
・改めて、自分自身の相談の流れや様子を客観的に観て、何を感じるか?
・どこに話を展開させるポイントがあったと思えるか?

そして、 相談する社長役の人には
・支援担当者役の方が〇〇〇という質問をしましたが、理解できていましたか?
・ 支援担当者役の方が 〇〇〇という質問をしましたが、 その時、何を思いましたか?何を感じましたか?
・ 支援担当者役の方が □□□という話題を提示したり、アドバイスをしてきていましたが、その時、 相談する社長役のあなたは■■■という反応をしていましたね。その反応をした時、何を思っていましたか?何を感じましたか?
・本当はなんて言いたかったのですか?
・本当はどんな話の展開を望んでいたのでしょうか?
というような質問をしていきます。相談の最中の社長役の人の心の中や心の声を具体的に表現してもらう機会を作ります。

そして、 相談する社長役の人の「相談中の本音」を表現してもらった事を、支援担当者役の方へ投げかけます。
・あなたが〇〇と言った時、実は社長役の人は●●と感じていたそうです。いま、それを聞くことが出来ましたが、それ(所謂、その瞬間の本音・心の声)を聞いて、どんな対応をすれば話の展開が変わったと思いますか?
・改めて、社長役の心の声を聴かせてもらいましたが、でも、その時あなたはどのような意図や戦略をもって話を展開していこうと考えていましたか?
・社長役のあの仕草、あの表情、あの口調、気付きましたか?
・あの仕草や表情、口調には、こんな意味が含まれていたそうです。では、今だったら、この時、どのような対応やどのような話しをすればよかったと思いますか?

このような質問をしながら、模擬的OJTロールプレイを進めていきます。ですので、ロールプレイを録画して、皆で振返りをするのです。動画にして後で振返るという事をするので、当事者は非常に学びになります。

多分、商工会や商工会議所の経営指導員研修等でこのような研修をするのはあまりないと思います。全国的にも数少ない研修内容だと思います。

自分で言うのもなんですが(笑)、経営指導員の相談対応力向上の研修ならば、私が実施しているこの研修はずば抜けていると思いますよ(^^)

模擬的OJTロールプレイで起きている事を題材にしますので、ロールプレイをしている当事者だけでなく、振り返り動画を観ている他の参加者も、「相談対応におけるコミュニケーションのありかた」を学ぶ事が出来る訳です。

ただ、この実践的な内容の研修にも問題点があります。それは時間がかかるという事です。動画を撮って振り返るこの研修では、1セットあたり、90~120分間の時間が必要になります。よって、一日で出来るセット数が3セットが限界です。また。4時間や5時間の枠の研修では十分な振り返りが出来ない為、実施不可能な研修です。

ですので、過去にこの研修を実施できたのは
・単会における個別研修
・中小企業大学校三条校での研修
と限られています。また、現在では三条校での研修でも「動画撮影での振り返り」はやっていませんので、現在は、単会の職員研修や単会の指導員研修(一日6時間研修)や県連合会主催の少人数の研修でしか実施していません。

時間も必要な研修ですが、実り多い研修ですので、単会で実施してみたい、または、県連研修で実施してみたいという方は、お気軽に相談してください。

ロールプレイで「良かった」と言ってもらえたことは、あなたの現時点での良さであり長所であり強みですので、それは引き続き実践していきましょう!
ロールプレイで「なぜそうしたか?」「どうして?」と聞かれた事は、自分自身のコミュニケーションの取り方を今以上によくするポイントです。
ロールプレイで「こうして欲しかった」「●●は気分が良くなかった」などのフィードバックを貰った事は、決して、批判・批評ではなく、あなたの伸びしろです。そのコミュニケーションの取り方を自分で意識して理解して、変更して行けば、確実に現状のあなたの相談対応力より一段も二段もあなたの相談対応力は向上します。

みなからもらったフィードバックはあなた自身へのギフトです。耳の痛い事も言われたかもしれません、自分が意図していた事とは違う意図で相手に伝わってしまったかもしれません。でも、フィードバックをしてもらって、あなた自身の「相談対応力・コミュニケーション力向上のヒント」がもらえるのが、この 模擬的OJTロールプレイ研修ですのでみなからもらったギフトをしっかりと自分のモノにしていきましょう!